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藝術と日常の物語

1973年のオイルショックと2020年のcovidー19

この二か月近く、家にこもっていた。コロナウィルスの感染予防で仕方なくではあったけれど、この間、社会は大きく変わり、今までの当たり前が突然、目の前から消えた。

 

店からトイレットペーパーやティッシュペーパー、マスクが消え、朝から買い求める人たちの長蛇の列。その光景を見て、小学生のころに体験した「オイルショック」を思い出し、なんだかほろ苦さと共に妙に懐かしい気持ちになった。

 

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オイルショック時のスーパーの様子

オイルショックは1973年秋、第4次中東戦争の勃発に伴うアラブ産油国(OAPEC)の石油戦略により、石油価格が高騰して、世界経済に大きな衝撃を与えたこと。オイルショックは安価なアラブ原油に依存していた西側先進工業国の燃料不足、原料不足をもたらし、生産が低下して急激な物価上昇となった。 

石油が高騰したため、その年の冬は大きな火鉢に練炭を入れて、寒さをしのいだ。よく一酸化炭素中毒にならなかったものだと思うが、当時の家は隙間だらけの木造家屋。本当に寒かった。

まだ小学生だったからよく覚えていないが、母が外で見聞きした噂話を信じて、大量のトイレットペーパーとティッシュペーパーを買い込み、その後、半年くらい押し入れの中に眠っていたのを覚えている。

 

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オイルショック後に、自然志向・倹約主義を強めて、大量生産・大量消費を否定する「チープ・シック」(※2)が誕生した。

1975年まで続いたベトナム戦争の影響で、ジョンレノンは、反戦と平和の思いを込めた曲、“♪ All we are saying is give peace a chance” を歌い、後に、名曲「Imagine(イマジン)」へとつながっていく。

 

 しかし、残念ながらこのムーブメントは長くは続かず、バブル経済の始まりと終わり、さらにグローバル化によって大量生産・大量消費、後戻りできないほどの環境破壊を引き起こしてしまった。

 

♪:Imagine
“imagine all the people living life in peace…(想像してごらん すべての人々が平和な暮らしを送っていると)”

 世界各地で紛争やテロが起きるたび、この歌を思い出し、多くの人たちが思いを託して続けてきた。

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 いま、コロナ後の世界はどうなるのか?について語られはじめた。

少し前からこの時代をVUCAの時代(「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字をつなげた言葉)と名付けたひとがいる。あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、将来の予測が困難な状態を意味する。

これからは”正解”はなく、自らが答えを作り出す”感性”の世界が訪れる。今までの価値観が大きく揺らぎ、多様性という言葉がさらに意味を持つ時代になる。

 

今回、コロナウィルスによって社会活動が止まったとき、中国の大気環境は改善され、インド北部のパンジャブ州で、200キロ近く離れたヒマラヤ山脈が数十年ぶりに見晴らせるようになり、市民を感嘆させた。

 まもなく東京も非常事態宣言が解除され、経済活動が再開する。しかし、これから私たちがどんな世界で暮らしたいのか、どんな世界を築きたいのか、想像すること、望むこと、夢見ること、そして声を出して語ることが大切だ。それぞれの違いを尊重しながら、みなで共に力を合わせ連帯していくこと。理想に向かって少しずつ世界を変えていく力が、人間には宿っている。

♪:Imagine
“imagine all the people living life in peace…(想像してごらん すべての人々が平和な暮らしを送っていると)”

 

ジョン・レノンのメッセージは、いまも私たちに強く訴えかけている。

 

(※2)フランスとアメリカのジャーナリストたちによる『チープ・シック―お金をかけないでシックに着こなす法』という書籍がベースになった、ファッション哲学のこと