金砂郷で蕎麦を作る
もう、何度となく訪れている茨城県北部常陸太田市。車を走らせていると、美しく広がる水田地帯と低く連なる山々、その中に隠れるように鳥居が、ぽつん、ぽつんと見えてくる。
山々をご神体として、古くから人々が五穀豊穣を祈り、与えていただいた自然を大切にして、今に受け継いできたのだということを肌で感じる。
常陸太田市内の全国でも指折りの「常陸秋そば」の発祥の地である金砂郷地区は、山間地特有の昼夜の気温差と、傾斜地に拓いた畑の土壌を生かして、良質なそばの産地として江戸時代から名高い。
私たちカングロは、昨年から金砂郷で畑を借りて蕎麦栽培を行っている。栽培方法は完全な無農薬の自然農法で、種まき、中耕、間引き、除草、収穫、脱穀まですべて手作業で行う。
しかし、無農薬、自然農法は私たちが目指すところだけれど、これはかなり骨が折れる。都会の虫一匹いないオフィスでデスクワークをしている私のような人には、かなり苛酷で、理想を頭の中で描くことと、実際の体験の間には大きなギャップがある。
それでも私は自然農法にこだわりたい。
薬剤を使うのは楽で便利ではあるが、自然に大きな負荷を与えてしまう。しかし農家さんを責めても解決はしない。農産物を買う、私たち消費者が何を求めているのか。安さや便利さ、形の善し悪しということにこだわり続けるかぎり、決してこの問題は解決しない。
私たちが選択するもの、ことが私たちの、子供たちの未来を創り、地球全体に影響を与えていく。
このグローバル化の波の中で、自然に多大なる負荷を与えながら、不自然な生き方をこれ以上続けることは、人類にとって決して幸せや喜びを生むことはない。
ひとつ、ひとつの手仕事に心を込めて、自分や周囲に差し上げる分だけ収穫する「スモール イズ ビューティフル」の精神は、これからの生き方に大切なヒントを与えてくれる。
もう奪い合いを止めよう。贈り合い、譲り合いの生き方に変えよう。
必要なものはすべて天から与えられているのだから。