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藝術と日常の物語

国連「1.5℃特別報告書」の警告

長いゴールデンウィーク、横浜の実家に戻ると、庭の蜜柑の樹に白い蕾がたくさん、たくさん顔を出していた。

この蕾が開き、白い美しい花が蜜蜂を惹きつけ、蜜蜂の力を借りて受粉をして、冬にはおいしい蜜柑の実を実らせてくれる。

この奇跡的な自然の営みを目のするたびに、私は自然の中に神を見る。

蜜柑の樹のいのちは、蜜蜂だけでなく、太陽や雨、風、土の中の微生物たちの力も借りて生きている。

私たち人間は、つながっているはずの自然と分離してしまったことで、大きなリスクを負うことになってしまった。

 2018年10月に発表された国連の「1.5℃特別報告書」では、地球の平均気温の上昇を、産業革命前に比べて1.5℃に抑えないと、地球全体が不安な状態に陥り、これを越えたときに起きる被害を考えたとき、人類は文明のあり方を変え、今までにない規模の変化が必要であると警告している、

 今回の報告書ではすでに1℃上昇しており、早ければ2030年には1.5℃上昇してしまうことが明らかになった。

この報告はとてもショッキングだけれど、すでにこの警告はアポロ計画が終了した1972年3月にローマ・クラブが発表した『成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』(大来佐武郎訳、ダイヤモンド社1972年刊)で発表されており、世界に衝撃が走った。そこには、人口と工業投資がこのまま右肩上がりに幾何級数的成長を続けると、地球の天然資源は枯渇し、環境汚染は自然が許容しうる範囲を超えて進行することになり、100年以内に成長は限界点に達するという衝撃的な内容が記されていた。

50年近く前に警告を受けていたにも関わらず、経済発展を優先させ「もっと後でいい」と先送りをしてきてしまったのだ。

メディアが購買意欲を煽り、大量消費、大量生産、流行を追いかけ、他人と比較して「もっともっと」と競争するかのように物を買いあさり、少し使っては捨て、新しいもの買うために働き続ける。私自身もバブルを経験した世代、皆が何かの幻想に踊らされ、狂っていた。

このような状態になってもなお、私たちは現実を直視しないで、幻想の未来を抱き続けている。時間はもう残されていないというのに。

 私たち一人ひとりが地球の本来のエコシステムを知り、人類もそのシステムの一部であることを自覚して、「もっともっと」ではなく、「あるものに感謝」して、循環の中で生きる暮らし方に今すぐ変える決心をしなければ、私たちの未来は最悪のシナリオへと向かってしまう。

 日本には元々循環の文化があり、和の思想がある。近代化以前の私たち祖先の暮らし方、考え方をもう一度学び、私たちの中に眠る「自然と調和して生きる」エコロジーコスモロジーのDNAのスイッチをONにしよう。

明日からではなく、今、すぐに。

 

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IPCC「1.5℃特別報告書」